今は姿を消した村跡の古里の山を守り、野良仕事と炭焼きを続けるのが私の従弟である。
冬は雪に埋もれるこの地も爽やかな新緑の候を迎え、彼は炭焼きに勤しんでいた。
今の窯は築10年。小屋の柱にかかる「棟札」には、鉄にゆかりのある「たたら」(鈩)の名を屋号として彼は8代目であることを記す。しかし、もっと古く元々の先祖は「田村」を名乗っていたという。
「さては田村麻呂の子孫か」と聞けば、まんざらでもなさそう。彼は当地の神楽の一員でもあり、
坂上田村麻呂(征夷大将軍)を題材にした演目「田村」で、彼は村人の役を演じているのだが、
「実はワシは田村麻呂の子孫だ」と言って周りから笑われているという。しかし、そう語る彼の屈託のない顔、古里を愛するこだわりに、本当に彼は田村麻呂の子孫かも知れないと私には思える。
炭焼きは火のかげんが大事。燃えすぎないよう窯の焚口を閉じたり、煙突を絞って行く作業をする彼の姿は森に溶け込んで、まぶしく見えた。
GW最後の青空に誘われるように彼の山を訪れた私達の気分も、実に爽やかだった。
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