火曜日, 5月 08, 2012

古里の炭焼き小屋


かつて鉄山をなりわいとし、今も旧宅跡の裏山に残る大杉の根元に榊としめ縄を祀って金屋子神の名残りを留める。その森には澄みきったせせらぎが響きわたり、小川の小魚もすっきり見える。

今は姿を消した村跡の古里の山を守り、野良仕事と炭焼きを続けるのが私の従弟である。
冬は雪に埋もれるこの地も爽やかな新緑の候を迎え、彼は炭焼きに勤しんでいた。

今の窯は築10年。小屋の柱にかかる「棟札」には、鉄にゆかりのある「たたら」(鈩)の名を屋号として彼は8代目であることを記す。しかし、もっと古く元々の先祖は「田村」を名乗っていたという。

「さては田村麻呂の子孫か」と聞けば、まんざらでもなさそう。彼は当地の神楽の一員でもあり、
坂上田村麻呂(征夷大将軍)を題材にした演目「田村」で、彼は村人の役を演じているのだが、

「実はワシは田村麻呂の子孫だ」と言って周りから笑われているという。しかし、そう語る彼の屈託のない顔、古里を愛するこだわりに、本当に彼は田村麻呂の子孫かも知れないと私には思える。

炭焼きは火のかげんが大事。燃えすぎないよう窯の焚口を閉じたり、煙突を絞って行く作業をする彼の姿は森に溶け込んで、まぶしく見えた。

GW最後の青空に誘われるように彼の山を訪れた私達の気分も、実に爽やかだった。

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